北海道のクマです

  今日もビールがうまい! ミニ一代おじさん大いに吠えるコラム

 4・石狩湾にログハウスを建てよう

  取材で訪れたクマさんのショップは、若いミニ乗りで

  あふれていた社長ッとか、クマさんとか、こっちが

  ビクビクするくらいみんな親し気で当の河西さんはいつでも

  笑顔なのだった。2年前、突然北海道に旅立ったクマおじさん

  は北の大地に何を感じたのだろうか

北海道が大好きなんだ。おいおいクマがいきなり何を吠えてるんだって

思っただろ。実は、今回のお題は、オレの新天地、北海道についてなんだ。

この土地の感想を一言で言うと、まあつまり好きなんだよな。

またしても難しいテーマをありがとう、T村氏。

第1回にも書いたが、今から30年以上も前に、あてもないまま遠い

町に行ってみたくなって、無銭旅行をしたんだ。その土地が北海道だった。

とにかく金がないから2等列車に22時間も揺られ続けた。

座席なんて木だよ。尻は痛いし、若かったけどひどく疲れた。そうやって

たどり着いたから、北海道は地の果てに思えた。マジでね。

将来の不安なんか抱えてた頃だから、あの旅行は言葉にならない

思いでになっている。その無銭旅行の後、不思議と北海道には縁がなくて、

2度目に訪れたのは、つい3年前だ。飛行機だったら、東京から1時間

ちょっとなんだよ。驚いたね。こんなに近かったんだね。いろんな想いが

駆け巡ったよ。オレに親切だったあの人はどうしているんだろ。

ひとりっきりになったあの場所は変わってしまったのか、なんてね。

そうして窓の外を眺めていたら、緑の大地がクマの目に飛び込んできた。

何かこう背筋がゾクゾクしてきたんだよ。千歳空港から札幌向かう途中でも、

またキたね。30年の時間を越えて見た景色の、なんて新鮮な感動!

思わず吠えちゃったよ。ドボルザークが初めてアメリカに行ったとき、

そのスケールの大きさに感銘を受けて、気持ちが高揚したまま作曲したのが、

『新世界』なんだ。オレはドボルザークと同じ気持ちになったね。

札幌に着くまで、いや北海道に滞在中は、いつも耳の奥で、『新世界』が

鳴り響いていたな。若かった頃とはまた違う気持ちで、あちこちを見て歩いた。

札幌ってのは政令指定都市なんだけど、街中に白樺の木が無造作とも

思えるほど植えられているんだ。オレは白樺の木が好きでね。

それだけで感動しちゃったよ。その札幌からクルマで30分も走れば、

風景ががらっと変わる。最高だと思ったのは、石狩湾に沈む夕陽だ。すごいぜ。

湾のど真ん中に太陽が落ちていくんだ。関東で育ったオレは、山に沈む

夕陽は何度も見てきた。だけど、水平線の彼方に消えていく太陽と、その後ろに

広がる空がこんなに豪快で美しいとは思わなかった。いや、まてよ。

似たような夕陽をどこかで見た覚えがある。あれは‘78年にパーツを

買い付けに行ったニューカレドニアだ。フランス語しか通じない島で、

3日間寂しかったな。小さなレストランでひとりで晩飯を食べているときに、

でっかい太陽が海に沈んでいった。でも、石狩湾の夕陽はそれ以上だったよ。

もうたまらない気持ちになって、オレはまたしてもスゲーって吠えた。

こんな場所で暮らしたいって、心から思ったよ。

そして2年前、実行に移しちゃったんだ。

さて、新しいミニ・ショップをだすのを手段にして、北海道に住む目的を

果たしたわけだが、最初はなんにも売れなかった。関東ほどミニをいじらないんだろうな

と予測してたけど、ここまでとは思わなかったよ。どうすんべぇかなって考えた。

すでに札幌にはミニショップがあったし、同じやり方では失礼である。

メカニックあがりのオレの個性を出すには、やはり修理をメインにするしか

他に道はない。クマの脳ミソで悩んだ挙げ句、よし、ミニには一切値段をつけずに、

お客との会話の中でミニをつくり上げていこうと決めた。決めたのはいいが、

お客よりオレが戸惑っちゃってね。初めての試みだし。なにしろ、このクマ面だろ。

お客が話しくれないんだ。中には得体の知れない下請け工場かと思ってたヤツもいた。

何事も最初は苦労するもんだよな。でもさ、ミニ好きってのはやがて気持ちが通じるんだよ。

会話の糸口が見つかれば、後は崩れ込むように盛り上がる。

誰もが結局は、いかに楽しくミニに乗れるかに行き着くんだ。来た頃は、

北海道人はミニをいじりたくないんだと決め付けていたけど、それは間違いだった。

彼らにも、こうしたいという強い希望はちゃんとあった。

外観はMK1仕様とか、ボディカラーはこんな色とか。

オレは、そういうリクエストをひとつひとつ聞いて、

好み通りのミニをつくることにした。

大事なのは、ノントラブルのミニじゃなきゃいけない点だ。

北海道は都市間が広いだろ。もし何もないところで止まったらシャレにならない。

そこで、ベース車輌は‘80年代後半を使って、エンジン、ミッション、

足回りをオーバーホールする。そういうミニをお客と一緒につくってゆくのを

ノースランドスペシャルと呼ぶことにしたんだ。いくらか値は張ってしまうが、

好みの形や色が実現できて、長く乗れる。信頼関係も生まれる。

納車のときの喜ぶ顔を見ていると、これは間違ってなかったなと思うね。

MK1やカントリーマンなんかをレストアしてきたオレにしてみると、

‘80年代のミニはボディさえ良けりゃ新車と同じだからね。仕事は早いよ。

全部バラして組み上げるのは、若いメカニックのいい教材にもなるし。

ヤツらに言ってるんだ。修理屋じゃダメだ、アーチストになれって。

そうじゃなきゃお客は喜んじゃくれない。オレたちがミニに愛を込めないで

どうするって、思った通りのことを口にしてるよ。

おかげ様で、ノースランドスペシャルは大好評です。北海道以外からも

注文が入るようになって、実のところ、てんてこまいなのだ。

レースにも行けないくらい、すっごく忙しい。なにしろこのノースランド

スペシャルは7日で1台仕上げられるんだけど、それでも追いつかない。

クマもメカニックたちも、うれしい悲鳴を上げてます。

2年前、ショップを始めた当初は寂しい感じだったけど、今じゃ土、日

ともなればミニの集会場だよ。楽しいお客ばかりでね。いつかしらクラブ

ができていて、何かあっては50台のミニが遊んでいる。そういう姿を

見ていて、北海道に来てよかったなとしみじみ思う。オレのサクセスストーリー

を話してるつもりはないんだよ。でも、もしひとつ自慢できるとしたら、

それはお客とじっくり話せたことかな。昔のオレになかったのは、そこなんだろう。

乗りたいと思っているミニをつくってあげられる。こんな楽しい仕事ができるなんて、

クマは本当にハッピーなのだ。

最近、内地から、なんてすっかり北海道の人間になっちゃているけど、

旅行で訪れた人が「クマさんに会いにきました」なんて寄ってくれるようになった。

クマ、とっても喜んでる。コラムを始めて本当によかったと思うし、

少なくとも店に顔を出してくれた人たちは読んでくれってるってことだものなあ。

感慨無量とはこのことだね。はるばる会いに来てくれて、ありがとう。

北海道に上陸したら必ず寄ってください。寂しがり屋のクマが、

いつでも歓迎しちゃうよ。今のオレの夢を話してもいいかな。

先に話した石狩湾が見渡せる丘にね、ログハウスを建てたいんだ。360度

見渡せる場所で、朝は石狩平野の地平線から昇る太陽を眺め、夕は湾の彼方の

海に沈むでっかいお陽様に感動しながらミニ談義に花を咲かす。

ジャグジーバスで汗を流したら、近海で獲れた新鮮な魚でバーベキュー。

たまらないね。フフフ、実はそういう家を建てる準備を、すでに始めているのだ。

5年計画なんだけどね。完成したら遊びに来てほしいね。それもミニで

乗りつけてくれたらもう最高。ミニのことを語り明かせるログハウス。

がんばってつくるからね。   


つづく